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太陽>アレクサンドル・ソクーロフ監督

 8月5日(土)から銀座シネパトスで放映になった、アレクサンドル・ソクーロフ監督作「太陽」。
 これが、靖国問題などが重なってか連日満員とのこと。私が鑑賞した日曜日も満員。早目に整理券と交換しておいたので、前の方の真ん中を陣取りゆっくり鑑賞しました。

 ソクーロフ作品は、実はこれが始めてのこと。今まで見逃してばかりでした。「マザー・サン」や「ファーザー・サン」など上映前の映画館でいつもチラシを貰っては生きそびれてしまっていたのです。

 広島、長崎に原爆が投下され、日本が戦争に敗退したと告げた後の天皇ヒロヒトの心の情調を描いています。あくまでも、ヒロヒトの心の苦悩と孤独を語り継ぐように、周りを取り囲む登場人物。

 この映画を配給するまではかなり時間がかかったそうです。太陽を創ったロシアの映画監督ソクーロフは、天皇ヒロヒトを敬愛しています。監督にとってヒロヒトは、「国家の滅信よりも人命を救うことを優先した。軍神には見えない」と述べています。

 私は戦後に生まれたので、日本が抱えてきた戦争問題のことは大変恥ずかしながらよく分かりません。

 井上清著の「昭和天皇の戦争責任」という著書を読むと、天皇夫妻がドイツのボンに訪問した際、ドイツ学生や居留アジア人たちが『ボンにおける戦争犯罪人ヒロヒト』といってデモを起こしたそうです。そのプラカードには、「600万人のユダヤ人を(ヒトラーは)ヒロヒトは5000万人のアジア人を(殺した)」と書いてあったそうです。これらは、無実の罪を被せ、天皇を侮辱したものか真実をのべたものか。

 海外でもこうして昭和天皇は"犯罪者"というレッテルを張られています。今でもその汚名は、ヒトラーのユダヤ人迫害と同じようにして、変わらず残っているのかもしれません。ベルリン映画祭にはこの作品は選ばれなかったので、それが証拠なのでしょう。

 昭和天皇裕人を演じるのは、イッセー尾形。私も過去に2度ほど一人芝居を見にいったことがありますが、一瞬の瞬きも忘れさせてしまう程、彼の芝居に目を食い入る人々、彼に浴びせ掛ける視線はただものではなかったと忘れられずにいます。
 今は閉館してしまいましたが渋谷のジャンジャンで見たお芝居は良かった。その一時も眼が離せない現象は映画の中でも存分に発揮しています。とにかく演技が細かいのです。昭和天皇の特徴と癖をよくとらえています。とはいえ、私の持つ昭和天皇のイメージはか弱く、いつも誰かが側に付いていないと駄目な程、老化していましたが。

 天皇が神だと崇められていた時代。戦争に負け、自分は降板した時、人間になったのだといいます。
 そんな神もマッカーサーとの会見を無事に進めていきます。映画の中では2回しかないが、10回に及んだといわれています。

 日本の天皇を"悪"とは思いたくないのですが、とても穏やかで時には幼稚で興奮気味、心情的な天皇の心の孤独を表現しています。監督が日本人ではないので、心底をついたような内容のものではなく、あくまでも美的に描いていますが、それが後になってまでジワジワと伝わってくる作品でした。

 また、ソクーロフや戦争の書籍にも触れていきたいです。

 Sora


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by sora_atmosphere | 2006-08-09 23:01 | 映画/Cinema